神と罪のカルマ オープニングfirst【01】


 財峨仁樹(ざいがひとき)という名の人物は、一体この世界に何人といるのだろうか。

 宝や価値のあるものの総称である『財』と高く険しき峰を表す『峨』で『ザイガ』。
 漢字の意味を繋げると『宝のある険しき山頂』。まるで財宝を手に入れることは簡単ではない、と語っているように思える苗字である。
 では、名前の方はどうだろうか。
 こちらは苗字とは違い、然程珍しくは無いのかもしれない。
 仁義の『仁』に大樹の『樹』で『ヒトキ』。
 『仁』を『ジン』と読むことの方が多いが、名前に『ヒト』として使われることは少なく無い。
 また、『仁』は読み方を変えるだけで、様々な名前へと変化させることが出来る。
 それは『ジンキ』や『マサキ』、『サトキ』『ヨシキ』『トヨキ』『トシキ』『ヒロキ』……と。
 では、ここで一つ考えてみよう。
 『仁』とは一体何か。
 『仁』という字は、人と人との間に通う親しみの意味を表している。
 五常の一つであり、親しむ、情け、思いやり、憐れみ、慈しむ、恵み育てる、徳を備えた人と多くの字義を持ち、その一つに『ひと』が存在する。
 『ひと』。『人の心』、『心の本体』。
 有名な言葉の一つに『樊遲、仁を問う。子曰わく、人を愛す』というものがある。
 略は、『孔子が樊遲の仁とは何か、という質問に対して≪人を愛することだ≫と答えた』。
 つまり、『仁』とは『人の心』あり、様々な『愛』のことなのではないか?
 そうなると、『仁樹』という名前は実に素敵な名前ではないか。
 『樹』とは植物。植物は『生きている』、『成長する』。
 空へと届けと成長し、高く、大きく、葉を広げる。長い年月をかけ『木』は『樹』に、『樹』は『大樹』となる。

 『仁樹』。
 『人を愛し生きていく』
 『人の心を育てる』
 思いやりのある子へと、徳のある子へと、慈しむ子へと――。

 どのような想いを込め、名付けられたかはわからない。
 しかし、この名を受け取った者は生きている。その足で、地を歩き、必死に生きている。

 その名に相応しい人物か……。
 『人の心』を持ち、『人を愛せる』か。
 生きた道と生きる道を見せてもらおう。





 『財峨仁樹』――。








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