神と罪のカルマ オープニングsecond【01】




 一日の全てを終え、朋音のそばで眠りにつく仁樹。

 彼が夢見るは、懐かしき過去。
 最愛の人と出会うためのかけがえのない過去。

 高校三年生の春、二人は出会う。
 仁樹の髪が全て漆黒の色だった時代。
 顔に幼さがかすかに残る少年と少女だった時代。
 引かれるように、導かれるように二人は出会ったのだ。

 少年、仁樹の瞳に映るのは夕日に包まれた世界と、それを愛おしく見つめる朋音。
 少女の頬には一筋の涙。両手を祈るように胸の前で握りしめ、夕日色の世界へと静かに呟いていた。

 ごめん、ごめんね、ごめんなさいと――。
 慈愛に満ちた声で世界へと謝り続ける少女の姿。

 仁樹はただ見ていた。どうして彼女を見つめていたのかわからない。
 まるで使命を与えられたかのようにずっと見ていた。
 やがて彼女の瞳に仁樹が映る。
 初めて交じりあった彼女の瞳。綺麗な、ブラウンの瞳が仁樹を捉え、仁樹もまた己の漆黒の瞳で彼女を逃さない。
 どのぐらいの時が流れただろうか。自分たち以外の全ての時間が止まったように、自分たちの時間だけが止まったように。
 彼らは目を交わらせ続けた。
 彼女が先に歩き出す。ゆっくりと、でも確実に仁樹との距離を縮めながら。
 仁樹はその場から動かない。足の裏と地面が糸によって繋がれたように動かない。
 まっすぐ、曇りもなく、仁樹に向かってくる。
 とうとう自分の目と鼻の先に立った彼女。

 瞳には声と同じ『慈愛』と、『悲哀』が秘められていた。
 彼女の唇が開く。

「縁 朋音です」

 未来の愛しき彼女の名前。

「あなたの『大切な人たち』に呼ばれました」

 これが財峨仁樹と縁 朋音の出会い。
 歴史に一生刻み込まれる〝事件〟の最中(さなか)。
 後に、『眠れない4年間』と人々に名付けられ、呼ばれることとなる事件の中心で。

 一生忘れることのない過去。
 魂に刻み込んだ過去。
 二人だけの過去。
 誰にもわかることのない、理解することが出来ない大切な過去。

 これは二人がともに寄り添い生きていくための始まり。
 楽しさも、嬉しさも、悲しみも、苦しみ。
 全て分かち合い、未来に歩いていくための大切な始まり。







 二人の物語の始まり───…………。








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