神と罪のカルマ オープニングsecond【07】




 街を騒ぎ立てる男が己の指を噛んでいる。
「ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!!!!!!!!」
 血が出てきているにも関わらず、並びの悪い歯で噛み砕いていく。  殺したい。この衝動を抑えることなどできない。それが自分でもだ。
 心の底から湧き上がる感情をぶつけずにはいられない。抑えてはならないもの。それは自分の指を犠牲にしてまで表していく。
《しばらく動くのではありませんよ》
 先ほどの静かな機械音のような命令に納得がいかない。電話が切られたあとも何の責任もないガラクタたちに当たり散らし続けた。
 投げる、蹴る、叩き割るなどものの原型が分からなくなるまで滅茶苦茶に暴れ回った。
 しかし、人間を嫌っても身体は所詮、人間であるのには関わらない。
 多くのガラクタたちにぶつかり続ければ疲れるというもの。長時間動かした身体は疲れ、足もうまく動かなくなる。
 膝から崩れるように倒れ、うつ伏せになる。そして、うつ伏せになりながら爪を噛んでいるのだ。
  「冗談じゃねーぞ、クソが!!なんで高貴となる俺が人間なんざのいうことを聞かなきゃならねぇんだ!」
 自分がまだ人殺しとして覚醒しきれていないから人間がそれに漬け込むのだ。勝手な解釈をしては傷付けた手を握って叩きつける。
 先ほど壊してできたガラクタの粒が拳に食い込む。痛いはずのそれを気にせずに叩き続ける。
「俺は元々才能を持っている!!それが覚醒しきれてねぇだけだ!!何処にでもある話だ!!
 才能があっても努力しなきゃ何もできねぇ!それが分からないとは、あいつも頭の悪ぃ人間だってことだ!!」
 この道化は気付いているのだろうか―――。
 口にする才能の話も、湧き上がる感情も全ては『人間』が生み出したものであることに。
 『人間』であることを証明しているものであることに、気付いているのだろうか。

 滑稽な醜い男が望むのは絶対なる『鬼』。
 人間が持つものを一切持たない人間ではない存在。
 絶対的強さ、暴力、虐殺といった恐れおののく存在。

 しかし、人間の全てを持たないとはいったいどのようなものだろうか。
 夢、信頼、可能性を全く秘めないもの。
 『感情』すらも持ち合わせていないもの。
 『自我』すらも持ち合わせていないもの。


 それが彼の望む『鬼』ならば、彼を見た者全員が口にするだろう。




 お前には無理だ、と―――……。








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