神と罪のカルマ オープニングforth【04】



《いますぐ、そこから離れてください》
 その言葉を男は理解できなかった。
「はぁ!!!?なんで、俺がここを離れなきゃいけねぇんだよクソが!!!!」
《そこで捕まりたいのならお好きにどうぞ》
「!!!??」
 捕まるとは。何故、男は自分が捕まらなければならないのだろうか。
 そもそも、捕まらないようにするのが電話越しの人物の役目だ。なのに、今回は違う。
〝男が移動する方法〟で捕まらないように細工しようとしているのだ。
 そのことに気付いた男は、頭に血が上った表情で電話越しに怒鳴り込んだ。
「てめぇ!!! さてはミスしやがったな!!!! 何してやがんだ!!!!」
《ワタクシがミス? 心外ですね。それに、ミスを犯したのは〝あなた〟ではありませんか?》
「あぁ!!!!? そのミスを何とかするのがお前なんだろう!!!!」
 今回のミス。それは、あの料理人に追いかけられてしまったことだ。
 だが、所詮はいまの男にとっては一般人。そこらへんの雑魚と称す人間と一緒だと。
 あんな一般人を片づけるのに手間などかかるのか。今までの第三者のように、証拠隠滅をすればいいだけだというのに。
《どうやら、貴方を追いかけたという人物は鋭い者のようで。〝手を出すことが危険〟と言った所でしょう》
「使えねぇ奴が!!!! だったら、俺が殺してきてやる!!!!!」
 追いかけられた恨みもあるのだろう。ガラクタに突き刺さっていた包丁を抜き、目の前にその憎き料理人の背中を想像する。
 そして、それを八つ裂きにするように包丁を振り回す。
 想像の中で、料理人の悲鳴、痛みに苦しむ声が響き渡る。必死に血が流れる場所を押え、地面に蹲る滑稽な姿。
「ぎゃははははああああああああ!!! 死ね死ね死ね死ね!!!」
 頭の中で、血を大量に死んでいく相手の姿に笑いが止まらない。
 いまにでも殺したい。いまなら殺せる。いますぐ殺させろ。
 狂気にまみれた姿で、男は包丁を振り回し続ける。
《殺したいのはわかりました。しかし、いまはそこを離れることだけを考えなさい》
「はぁ!!? 折角、いい気持ちだっていうのに水をさすんじゃぁねぇええええええ!!!」
《これは、これからの貴方の活動に深くかかわるのですよ》
 頑として離れようとしない男に、相手は理由を言い始めた。
《どうやら警察の中に〝切れ者〟がいるらしく、貴方の『花火』で散った欠片を手掛かりに、そこに何かがあると感づいたようです》
「なんだって……!?」
 自分が祝いとして打ち上げた『花火』が、そんな事態を招くとは思っていなかったのだろう。
 しかし、当然といえば当然だ。男は警察を舐めきっていた。
 そして、その油断が自身を捕まる危険へと陥れたのだ。
《新たな隠れ場所はこちらが用意しましょう。早くそこから離れて、出来るだけ遠くに逃げてください》
「っち!!!」
 イラついた手付きで終了のボタンを押し、急いでここを出る準備をする。
 本当に困ったことだ。男は再び苛立ちの舌打ちをした。
 ここには長いこと居座ったのだ。指紋や自分の髪の毛など、自分への手掛かりとなるものがそこらじゅうにあるに決まっている。
 ここを離れるとは思っていなかったのだ。いちいちものを触るときに手袋など身に着ける訳が無い。
 しかし、それでも何処かであの電話の相手がどうにかするだろう、と思いながら黒ずくめな姿を慌ただしく動かすのであった。







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