神と罪のカルマ オープニングfifth【07】



 『財峨』は許せなかったんだ。

 この世界が。自分たちの『犠牲』の基に、のうのうと生きている者たちが。
 どうしても、許せなかったんだ。
 何百年と、『神』に仕えたのに―――。
 全ての闇を。穢れを。軽蔑されしことを。背負ったのに。
 『罪』の一族として、『平和』を願ったのに―――。
 それを、全て、裏切られた。
 何百年にも渡った、『誓い』を―――。
 『神』は破ったのだ―――。
 この世で最も醜いことを。最低で最悪なことを。
 『神』は、『罪』にしてしまった。
 道徳も、人としての誇りも何もない。
 多くの『罪』の―――。
 『人間』の人生を壊した―――。

「お前たちは、我々の『所有物』だろう―――!」

 それが、『神』と『罪』が決別した瞬間だった。

 許せない。
 許せない――――!!
 『誓い』を破り、忘れた『神』が―――。
 自分たちを『所有物』と言い切った『神』が―――。
 『罪』の人生を、軽々しくみた『神』が―――。
 許せない。
 許すものか―――!!
 何も知らない、『世界』を―――。
 自分たちの存在を知らないで生きている『世界』を―――。
 『神』だけを称える『世界』を―――。

 だから。
 思い知らしてやろう、と思った。
 自分たちの存在を。『罪』の恐ろしさを。
 『罪』を忘れたことへの『罰』を―――。
 『神』と『世界』に与えようとした。
 『罪』とは『責任』だ。
 犯してしまった、間違ってしまった過ちを、誰もが背負わなければならない。
 押し付けてしまった『罪』を、忘れてはならない。捨ててはならない。
 『神』だからといって、逃げてはならない。
 だから。
 『罰』を与えよう、と思った。
 『復讐』という『罰』を―――。
 『罪』を軽んじた『罰』を―――。
 『神』と、彼らが〝守りたかった〟『世界』に―――。

 だが、相手は『神』。容易ではない。
 何度も、何度も、『罰』を与えるべく立ち向かった。
 そして、失敗に終わる。『罰』を与えることが出来ない。
 それどころか、窮地に追い込まれたことだってあった。
 その度、北へ、北へと逃げて行った。
 『神』に、敵うわけがない、と。逆らうな、と。
 批判されているようだった。
 それでも、諦められなかった。
 人生を壊した。奪った。忘れた。所有物扱いした。見下した。
 そんな『神』を許せなかったから。
 『神』という存在を否定したかったから。

「ならば、時を待とう―――」

 『罪』の、『主』が言った。

「盛者必衰の理。『神』だからといって永遠ではない。
 生まれてくる子が必ずしも天才とは限らない。
 持って生まれた才能を、使えないかもしれない。無駄に終わらせるかもしれない。利口ではないしれない」
 この世に、絶対的なものはない。
「必ず、穴は生まれる。滅びの要となる穴が。
 ならば、我らはその時の為に、力を蓄えるのだ。与える『罰』の力を」
 『主』の言葉は、『罪』に希望を与えた。
 悔しくて、悔しくてたまらない心に光を与えた。
「この世で最も、恐ろしいものを。誰もが恐れる『罰』を与えよう」
 誰もが恐れるもの―――。
 誰もが必ず訪れるであろう、『恐怖』――――。
「それを与える存在を〝作ろう〟」
 これが―――。
「人を、〝躊躇わずに殺せる存在を〟―――」
〝新たな『罪』の始まり―――〟。
「〝『死』を与える存在を作ろう〟―――」

 それから、何十年もの間―――。
 『罪』は待ち続けた。『神』が衰えるその時を――――。
 『罪』は作り続けた。『罰』を与える存在を―――。
 幾度となく、我慢と失敗を繰り返して―――。
 この思いを。『一族の思い』を―――。
 叶えるために――――。



「〝完成だ〟……」
 そうして、生まれたのだ―――。
 『神』が衰えた時代。『神』の世代が変わったこの瞬間―――。
 『罰』を与えるために作られた存在――――。
 誰も、気付くことが無く、作られた――――。
 新たな『罪』を、犯してしまったことに気づかないまま作られた存在―――。
 『一族の思い』に捕らわれ続けた、哀れな『人間』が犯してしまった『罪』―――――。

「……」

 作ってしまった――――。
 『人形』を―――――。
 意思を、感情を持たない『操り人形(マリオネット)』を―――――

 壊してしまった――――。
 『人間』を―――――。
 生きるはずだった、歩むはずだった『人生』を―――――。





 『仁樹』を――――……。








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