神と罪のカルマ オープニングsecond【03】



 『それ』は街の中に存在していた。

 和の世界ではない外の世界。
 大人と子供。男と女。若き者に老いた者。派手な色や地味な色。
 五月蠅いものや静かなもの。歩く者や止まる者。笑う者や泣いている者。
 色々で様々な多くの人間が街の中に、世界の中に生きていた。

 世界は真っ白なキャンバス。色は世界に生きるもの。
 命あるものすべては生まれたときからの絵師。いや、生まれる前からの絵師。
 命の一つ一つが握って生まれてきた自分の筆を持ち、自分の作り出す色で塗っていく。
 赤、青、黄、緑、桃、茶、黒、白と力強く丁寧に塗っていく。
 いずれその手が止まるまで、筆がボロボロになって折れるまで塗り続けていく。

 生きるものにとって世界は必要。
 世界にとって生きるものは必要。
 『それ』は世界を必要にしなかった。
 『それ』は世界に必要にされなかった。
 世界が『それ』を愛さないように、『それ』も世界を愛さない。
 『それ』に『愛なんかなかった』。
 存在する『それ』を世界は認めない。
 自分の『筆』を持たない、色のない『それ』を世界は認めない。
 『それ』には何もない。何も持たない。持つことすらしない。

 世界にとって異端なもの。存在してしまったもの。
 『人』の『形』をした人間ではない異形なもの。

 『人形』―――……。

〝人間のように見えるだけ〟。
 手も足も目も口も鼻も耳も髪も胸も。
 すべては〝そのようにみえるだけ〟。
 見えない紐で吊るされ、〝立っているように見えるだけ〟。
 『息をしているだけ』『心臓が動いているだけ』は〝人間の真似〟。
 吊るす先にいる『人形師(パペッター)』に〝操られるだけ〟。

 『それ』は『人形』。
 『操り人形(マリオネット)』―――――。

 『操り人形(マリオネット)』のそばを、『筆』と『色』を持つ人間たちが通り過ぎていく。
 そんなものに気を取らずに、世界に『色』を付けていく。ときには他者と混じり合い、新たな『色』を作りながら塗り続けていく。

 ガラス玉のような、目のようにみえるものを開かしたまま、立たされる『操り人形』。
 手のようにみえるものを動かされ、ポケットに入っていた携帯を取り出させられる。
 指のようにみえるそれを動かされ、通話ボタンを押させられる。
 耳のようなものに携帯を近づけさせられる。

 人間のような脳に、携帯からの声を聞かさせられる―――。








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